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    バルト三国・北欧 魅力的な色に出会えるタリン 2022-09-21


    バルト三国のうち最も北に位置する人口約130万人の小さな国――エストニア共和国の首都タリン。フィンランド湾に面する港町で最北のハンザ同盟都市の一つとして交易で栄えた歴史を持ち、ユネスコ世界遺産に登録された旧市街(タリン歴史地区)は欧州で指折りの保存状態の良さで知られます。全長約1.9キロメートルの城壁の中に一歩足を踏み入れれば、中世にタイムスリップしたかのような街並みが楽しめます。

    そんなタリンに滞在している間、つい注目したくなるのが「色」。

    赤瓦屋根の建物の間を縫うような石畳の路地を散策するとパステルカラーの外壁、木製の玄関扉や窓に施された装飾が次々に現れ、歴史情緒のある重厚感を漂わせながらもその色遣いがなかなかどうして可愛いのです。高台のトームペア地区から一目で見渡せるほどコンパクトにまとまっているので、足に任せて自分だけのフォトスポットを見つけてみるのも楽しいはず。

    ©Kumu Art Museum (クム美術館)

    旧市街の正面玄関ヴィル門の近くからトラムやバスに乗って、カドリオルグ公園の東端にある「クム美術館」を訪れるのも一興です。弓形のスタイリッシュな館内では現代アートに至るまで幅広い展示を行っており、じっくり鑑賞するなら半日は割きたいところ。所蔵作品のなかで最も古い18・19世紀の写実的な絵画は貴族・知識階級を形成していたバルト・ドイツ人画家が主役ですが、彼らのもとで学んだエストニア人画家が20世紀初頭に制作した絵画は象徴主義や表現主義の影響を濃く受けつつも、基調をなす青色やまるで夏と冬の色彩が混在しているような独特のコントラストが際立っていて新鮮に映ります。


    ©Maret Põldveer-Turay / Visit Tallinn (タリン市観光局)

    旧市街の北西側に広がる「カラマヤ地区」は、改装や再開発により人気エリアとして生まれ変わりつつある元工場地帯。流入する労働人口の受け皿として1920~30年代を中心に建てられた木造住居(タリンハウス)は低コスト化の関係で装飾は控えめである一方、中間色で塗られた外装がほとんどで海と森に囲まれた景観に絶妙にマッチしています。市民に人気のビーチ「ストローミ海岸」を目指してさらに西側へ進むと1960年代の低層プレハブ集合住宅(フルシチョフカ)が立ち並ぶようになりますが、色合い的には同様の傾向がみられます。


    ©Estonian Museum of Applied Art and Design (エストニア工芸デザイン美術館)

    再び旧市街に戻って「エストニア工芸デザイン美術館」に展示されている近現代のテキスタイルやガラス製品に目を移すと、ナチュラルカラーとビビッドカラーのメリハリが強く印象に残り、長く暗い冬を過ごす室内に暖かさと明るさを取り入れようとする北欧インテリアとの共通性がうかがえます。

    13世紀にデンマークの支配下に入って以来、ドイツ騎士団、スウェーデン、帝政ロシア、ナチス・ドイツ、ソ連と変遷した統治者のもとで多様な文化的影響を受けてきたタリン。周辺国の色彩感覚と似ているようで違う、ここだけでしか出会えないユニークな色で溢れています。

    写真や映像では伝えきれない色たちを、是非ご自身の目でご覧になってみてください。