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    バルト三国・北欧 ピンクに染まるリトアニア? 2022-10-07


    ©Go Vilnius

    迷路のように入り組んだ石畳の路地に歴史的建造物が多数残る旧市街と、社会主義時代に整備されたアスファルトの無機質な新市街。そんな2つの顔を持つリトアニアの首都ヴィリニュス。

    市庁舎広場に面して建つ「聖カジミエル(カジミエラス)教会」は最古のヴィリニュス・バロック様式建築の一つで、ピンク色の華美なファサードが目を引きます。他国による統治下で穀物庫、ロシア正教会の聖堂、ルター派教会の礼拝堂、無神論博物館へ転用されるという苦難に見舞われましたが、1991年の独立回復以降は当初のイエズス系カトリック教会堂に復帰しています。ほかにピンク色の外観をしたカトリック教会堂は旧市街だけでも「聖テレサ教会」「聖コトリーナ教会」「諸聖人教会」があり、約15%を占めるポーランド系市民の信仰の場にもなっています。

    一方、約10%のロシア系市民が集う正教会でもピンク色が使われています。たとえば、旧市街の正面玄関である夜明けの門から歩くとすぐ目に入ってくる玉ねぎ型アーチの門が印象的な「聖霊教会」は見た目がピンク色であることもさることながら、正教会建築にもかかわらず近隣のカトリック教会堂と調和するようにヴィリニュス・バロック様式で建てられています。一方、ネオ・ビザンティン様式で1860年代に再建された「聖ニコライ教会」「聖パラスケヴァ金曜日教会」はこれぞ東方正教会といった佇まいですが、外観はやはりピンク色。


    ©R. Tenys / Lithuania Travel

    所変わって、リトアニア第二の都市カウナス。杉原千畝の「命のビザ」の舞台としてご存知の方も多いでしょうが、歴史を感じさせる落ち着いた雰囲気の漂う街です。ひなびた旧市街の一角にある塀に描かれたストリートアートはなんとショッキングピンク色のゾウ。ゾウよりも先にあったカップルの名前とおぼしき落書きから着想を得たリトアニア人アーティストが巨大な愛を表現したものだとか。


    ©Alytus - Lietuvos kultūros sostinė 2022

    ピンク色のゾウつながりで挙げると、南部の都市アリートゥスには高さ4メートル超のピンクゾウの像があります。初めはヴィリニュスの商業施設に設置されていて上述のアーティストが買い取ったのちにアリートゥス市近郊に住むその友人の手に渡ったもので、同市がリトアニア文化首都を標榜している2022年いっぱいは市内各地で展示されるようです。


    ©J. Ramanauskienė / Lithuania Travel

    最後に忘れてはならないのが、ビーツを使った冷製スープの「シャルティバルシチェイ(šaltibarščiai)」。現在のリトアニア・ベラルーシ・西部ウクライナを含む地域を領有した中世国家のリトアニア大公国に起源を求められ、お隣のポーランドでは「リトアニア風冷製スープ」という名称で呼ばれています。真っ赤なビーツに白い発酵乳製品を混ぜ合わせることで生み出された色は、配合の分量によってパステルピンクからマゼンダまでさまざま。刺激的な色とは裏腹に味はとてもさっぱりとしていて、刻まれたキュウリやタマネギが清涼感を与えて夏にぴったりです。2020年夏には観光振興公社が「Lithuania Goes Pink」と題し、シャルティバルシチェイを提供する全国の飲食店マップを公開するなど大々的なキャンペーンを行っていました。

    余談ですが、2019年に結成して現在リトアニア国会で連立政権の一翼を担っている自由党の公式カラーも目の覚めるようなピンクだったり。

    リトアニアの街中に溶け込んでいるピンクを探してみるのも楽しいかもしれませんね。