チェコ第2の都市ブルノ。
チェコの前身となるモラヴィア辺境伯領の首都として栄え、旧市街の丘の上には13世紀に建てられたシュピルベルク城が街を見下ろします。
そんなシュピルベルク城の建つ丘の中には、冷戦時代の核シェルターが隠されています。
第二次世界大戦時、ブルノの街はドイツの支配下にありました。連合国の空襲に備え、街の各地に防空壕が建設されました。ソ連によるチェコ解放後、チェコスロバキア社会主義共和国が誕生。防空壕のうちの1つは共産党政府に接収され、迫りくる核戦争に備えた核シェルターに改造されます。

核シェルターの建設は秘密裏に行われ、『10-Z』のコードネームがつけられました。その存在を知るのは、『ノーメンクラトゥーラ』と呼ばれた要人リストに記載された者、つまり共産党幹部のみ。一般市民を核の炎から救うことはこのシェルターの目的とされていませんでした。
幸いにも実際には使用されることがなかった核シェルター10-Zは、現在は博物館となり、一般公開されています。ガイドツアーも行われ、シェルターの歴史や設備について学ぶことができます。
そしてなんと、核シェルターに宿泊することもできるんです!
シェルターでの生活を、まさに身をもって体験することができます。
共用のトイレにシャワールーム、窓のない部屋、薄暗くて狭い通路、岩のように固いベッド・・・。
文句は言わないでくださいね。ここに避難できるだけマシなんですから。




500人を収容する想定で作られたシェルター。1人部屋、2人部屋、大人数のドミトリーまで、部屋数は意外に多いです。
シェルターのいたるところに冷戦時代の通信機器やガスマスク、ヘルメットなどが展示され、核戦争への恐怖がかつて現実のものだったことを感じることができるでしょう。
ラジオをつければ、The Ink Spots の曲が流れてきそうですね。
♪I Don't Want to Set the World On Fire~♪

さて、シェルターのあるブルノの街は、地下施設が多いことが特徴です。
地下神殿のようなレンガ造りの地下貯水槽、
壁を埋め尽くす頭蓋骨が衝撃的な聖ヤコブ教会のカタコンベ、
中世に貯蔵庫や錬金術師の研究室として使われていた地下迷路、
などなど・・・
冒険心のある方にはうってつけ。ブルノを訪れた際には、地下巡りをしてみてはいかがでしょうか。